プレス成形加工における力学的アプローチの入門書、専門書は少なくないが、成形シミュレーション導入時の準備、結果評価、問題点の判断と対策を解析した文献は本書が初めてと言ってよい。添付のCD-ROMが理解を助ける。
はじめに
金型設計などの現場において、成形シミュレーションソフトウェアが使われるようになって久しい。近年の普及は目覚しく、業務の一環として完全に定着してきている。それにともなって、ブラックボックスとして使われることが多くなってきたように感じられる。そのような中、ソフト使用者側に立った入門書として、本書を執筆した。
本書は、成形シミュレーションを使用されたことのない方、あるいはこれから使用される方には、オペレーションの例や解析事例を多くのせ、できるだけイメージを膨らますことができるように配慮した。また、既に使われている方には、弾塑性有限要素法の基礎を解説し、さらに理解を深めて頂きたいと思う。成形シミュレーションソフトウェアは、便利なツールであるが、前準備から解析・結果の判断まで、多くの技術が必要とされている。本書が、的確なシミュレーション結果を導くのに少しでも役に立てれば幸いである。成形シミュレーションソフトウェアを実感して頂くため、多くの解析結果を保存したCD-ROMを添付している。 をクリックすると結果が再生するようにリンクしているので、参照頂きたい。
本書を執筆するにあたって、理化学研究所の牧野内昭武博士、東京農工大学の桑原利彦助教授、(株)先端力学シミュレーション研究所の安藤知明博士には、色々な御指摘・御指導を頂いた。この場を借りて、心から御礼申し上げ感謝致します。4章のデータの一部は、(株)ヨロズ殿に御協力頂いた。また、データ処理に関して、(株)先端力学シミュレーション研究所の景山朝子氏に協力を頂いた。電気通信大学知能機械工学科横内研究室の澤田瑞樹君には、色々な議論に付き合ってもらった。合わせて感謝致します。
最後に、本書では多くの論文や資料を参考にさせて頂いている。引用させて頂いた方々に、心から敬意を表します。
2003年3月 吹春 寛
目次
はじめに●i
編集委員会●ii
第1章 成形シミュレーション
1.1 成形シミュレーションの概要●1
1.1.1 成形シミュレーションとは 1
1.1.2 成形シミュレーションの効果 3
1.1.3 成形シミュレーションの適用成功例 5
1.2 成形シミュレーションの現状●6
1.2.1 成形シミュレーションの歴史 6
1.2.2 成形シミュレーションソフトウェア 7
1.2.3 世界の成形シミュレーション 9
1.3 成形シミュレーションシステム●10
1.3.1 成形シミュレーションのシステムの概要 10
1.3.2 プリ・プロセッサー 12
1.3.3 ソルバーシステム 15
1.3.4 ポスト・プロセッサー 17
1.4 CADデータ●18
1.4.1 CADデータについて 18
1.4.2 データ交換における課題 19
第2章 弾塑性有限要素法の基礎
2.1 材料の特性●21
2.1.1 試 験 片 21
2.1.2 引張り試験 22
2.1.3 加工硬化特性 23
2.2 応力とひずみ●25
2.2.1 応 力 25
2.2.2 釣合いの式 26
2.2.3 ひ ず み 28
2.3 塑 性●30
2.3.1 降伏条件 30
2.3.2 塑性流れ則 32
2.3.3 弾塑性構成式 33
2.4 仮想仕事の原理式●35
2.4.1 仮想仕事の原理式 35
2.5 有限要素法●36
2.5.1 有限要素近似 36
2.5.2 有限要素メッシュ 38
2.5.3 三角形要素の形状関数 39
2.5.4 Bマトリクス 40
2.5.5 Dマトリクス 41
2.5.6 剛性方程式の作成 42
2.5.7 連立一次方程式の解法 44
2.6 計算アルゴリズム●46
2.6.1 Rmin法 46
2.6.2 静的陽解法アルゴリズム 47
2.7 数値計算法の補足●48
2.7.1 アイソパラメトリック要素 48
2.7.2 数値積分(numerical integration) 50
第3章 成形シミュレーションソフトの実際
3.1 プリ・プロセッサー(Pre-Processor)の操作●52
3.1.1 プリ処理の流れ 52
3.1.2 プリ・プロセッサーの操作例工程情報設定 53
3.1.3 材料情報設定 54
3.1.4 工具情報設定 56
3.1.5 ビード・トリム情報設定 58
3.1.6 境界条件の設定 60
3.2 材料DBへの材質登録●61
3.2.1 基 本 61
3.2.2 物 理 量 62
3.2.3 特性値の計算 63
3.3 ポスト・プロセッサー(Post-Processor)の操作●65
3.3.1 材料表示 65
3.3.2 工具表示 66
3.3.3 アニメーション機能 67
3.3.4 物理量表示機能 68
3.3.5 プローブ値表示 69
3.3.6 断面表示 70
3.3.7 材料重ね合せ機能 71
3.3.8 スプリングバック量測定 72
3.3.9 結果の判定法 73
第4章 成形シミュレーション適用事例
4.1 成形シミュレーションを適用した成形性検討事例●75
4.2 実自動車部品でのプレス成形シミュレーション適用事例●81
4.3 パイプベンダーの解析事例●86
4.4 ハイドロフォーミング解析事例●91
索 引●95