プレス加工は、加工技術とノウハウで差別化が図られると言っても過言ではない。本書は、プレス加工を行う際のノウハウや発生する問題に対する対処法をわかりやすく解説した現場で役立つプレス加工の指南書。初級者からベテランまで役立つ内容を満載。
目 次
はじめに
第1章 抜き加工
Q1―1 抜き加工の原理を知りたい
Q1―2 抜き型のクリアランスの決め方は
Q1―3 破断面およびだれを少なくし、せん断面を長くしたい
Q1―4 刃先を再研削してもすぐにバリが出る
Q1―5 部分的に発生する大きなバリをなくしたい
Q1―6 幅の狭い製品を抜くと正しい寸法と形状にならない
Q1―7 抜いた後の製品の反りを少なくしたい
Q1―8 できるだけ細い(小さい)穴を抜きたい
Q1―9 板厚が0.1mm以下の薄い板を抜きたい
Q1―10 かす浮きを防ぎたい
Q1―11 かす詰まりをなくしたい
Q1―12 抜き加工で工作油をうまく付ける方法は
Q1―13 プレス加工後にバリを取る方法は
Q1―14 抜いた穴の位置が安定しない
Q1―15 シェービング加工で切りくずが金型内に 残らないようにしたい
Q1―16 抜き加工でのさん幅の寸法はどのように決めたらよいか
Q1―17 抜き加工の場合のシャー角の効果と注意事項を知りたい
第2章 曲げ加工
Q2―1 曲げ加工の原理を知りたい
Q2―2 曲げ加工で角度が開く原因と対策は
Q2―3 曲げる部分が割れるのを防ぎたい
Q2―4 曲げた製品の反りをなくしたい
Q2―5 曲げる製品の展開寸法を計算で正確に求めたい
Q2―6 曲げ加工で位置がずれるのを防ぎたい
Q2―7 曲げる高さがごく低い場合、うまく曲がらない
Q2―8 製品と金型の当たり傷をなくしたい
Q2―9 U曲げ加工の曲げ高さを微調整したい
Q2―10 フランジのある製品を曲げるとフランジにしわが出る
Q2―11 丸め加工で丸くならない
Q2―12 曲げ部に接近した穴が変形する
第3章 成形加工
Q3―1 成形加工の原理とほかの加工法との違いを知りたい
Q3―2 バーリング加工の先端が割れる
Q3―3 バーリングの側面が垂直にならない
Q3―4 バーリングの高さを高くしたい
Q3―5 材料の一部を凸状に張出すと、製品全体がゆがむ
Q3―6 カーリングの形状がきれいな丸にならない
Q3―7 絞り加工後の成形(リストライク)で 製品がパンチに密着して取れない
Q3―8 ネッキングで発生するしわおよび変形をなくしたい
Q3―9 張出し成形で形状と寸法の精度が悪い
Q3―10 フランジ成形の形状と寸法を精度よく作りたい
Q3―11 開口部より奥の方が大きい筒状の製品を作りたい
第4章 絞り加工
Q4―1 円筒絞りのブランク寸法を正確に求める方法は
Q4―2 円筒絞りの工程数と工程ごとの形状および寸法の決め方
Q4―3 フランジのない製品を絞る場合に注意することは
Q4―4 円筒絞りで真円度が悪い
Q4―5 絞り加工でのクッション圧力を どのように決めたらよいか知りたい
Q4―6 絞り加工で発生するしわの原因とその対策を知りたい
Q4―7 絞り加工で発生する割れの原因と対策を知りたい
Q4―8 絞り加工の工作油の選定と塗布の方法は
Q4―9 角筒絞りで製品がゆがむ
Q4―10 順送り型で、前日と同じ条件で加工をしても、 翌日は同じように絞れず、トラブルが多い
Q4―11 絞り加工後の製品のフランジの平面度をよくしたい
Q4―12 絞り加工でフランジのコーナーの外Rを小さくしたい
Q4―13 ステンレス鋼がうまく絞れない
Q4―14 絞った後の製品の縁を水平にカットしたい
Q4―15 順送り型での絞り加工の注意事項は
Q4―16 順送り型で絞る方向(上向きと下向き)は どのように決めたらよいか
第5章 圧縮加工
Q5―1 板材をコイニングで潰したとき、厚さが安定しない
Q5―2 圧縮加工用の金型の破損を防ぎたい
Q5―3 エンボス加工で外側の角を鋭角にしたい
Q5―4 反りのある製品を面押しで平面度をよくしたい
Q5―5 コイニングをした面が平らにならない
Q5―6 順送り型の一部で圧縮加工をすると、 ほかの部分の寸法が変化する
Q5―7 圧縮加工に必要な荷重の計算方法は
第6章 プレス作業
Q6―1 安全な作業方法は
Q6―2 安全装置の正しい使い方は
Q6―3 金型の正しい取付け方法は
Q6―4 プレス機械と装置の正しい調整方法は
Q6―5 試し加工(トライ)で失敗しないための注意事項は
Q6―6 製品の検査と判断方法は
Q6―7 段取りのときの調整を少なくしたい
Q6―8 自動加工でチョコ停をなくしたい
Q6―9 加工速度を速くして生産性を上げたい
Q6―10 異常を検出するセンサーの誤動作が多い
Q6―11 朝のスタート時にトラブルが多い
Q6―12 圧縮空気で製品がうまく飛ばない
第7章 金 型
Q7―1 抜き加工でパンチが破損する
Q7―2 抜き部でコーナー部分が異常に摩耗する
Q7―3 ストリッパガイド式の金型の注意事項
Q7―4 絞り型のダイRを正確に仕上げたい
Q7―5 金型の寿命を延ばしたい
Q7―6 段取りが容易な金型構造は
Q7―7 予備部品を交換したとき、そのままでは 生産できずに問題が多い
Q7―8 金型の保守整備の方法を知りたい
Q7―9 金型製作でトライおよび調整を少なくしたい
Q7―10 Q. D. C金型について知りたい
Q7―11 金型の標準化の内容と標準化の方法は
Q7―12 金型の品質と合否の判定方法は
第8章 プレス機械および装置
Q8―1 プレス機械の種類と選ぶ基準は
Q8―2 プレス加工に必要な能力について知りたい
Q8―3 プレス機械の精度とその測定方法について知りたい
Q8―4 プレス機械の仕様について知りたい
Q8―5 プレス機械と安全装置などの始業前点検の方法は
Q8―6 サーボモータープレスの特徴と用途
Q8―7 トランスファ装置について知りたい
Q8―8 マルチフォーミングマシンの用途と特徴は
第9章 被加工材料
Q9―1 材料の板厚のばらつきが大きく、製品の品質が安定しない
Q9―2 高張力鋼板(ハイテン材)のプレス加工上の ポイントを知りたい
Q9―3 コイル材を交換すると製品の反りが変化する
Q9―4 材料が保管中に汚れたり、錆びるのを防ぎたい
Q9―5 材料の性質を示すn値とr値とは
Q9―6 材料の絞りおよび成形性を知る方法は
Q9―7 亜鉛メッキ鋼板の加工上の注意事項について知りたい
索引
はじめに
プレス加工の現場ではさまざまな課題やトラブルに直面し、その解決を迫られています。これらは単に試行錯誤を繰り返しても解決できない場合が多く、それぞれに急所に当たる勘所(ツボ)があります。このツボを外すと、闇夜の鉄砲で何回やっても当たらなかったり、靴の上からかゆいところを掻くようなもどかしさを感じることになります。
一方多くの現場には熟練者によるノウハウ、ツボ、コツなどが多くあります。しかしこれらの多くは偶然結果がよかっただけで根拠も再現性も少ないものが多くあります。
技術の多くは失敗の積み重ねの中から生まれ、大きく成長します。本書で述べた対策の中にも、多くの失敗、実験および改善などを繰り返し、生まれたものも多くあります。これらの技術を利用することで、失敗を未然に防ぎ、解決を早めることができることを期待しています。
本書は現場で実際に直面する課題について、次のような趣旨でまとめました。
(1) 内容は、普遍性の高いもの以外は基礎的な部分を少なくし、多くの現場で実際に発生していたり、発生する可能性の高いものを厳選する。
(2) テーマは実際に現場で発生し、対応が必要であり、すぐに利用できること。さらに実施した結果は効果が大きいこと。
(3) 対策内容は、実際の問題に直面し、試行錯誤と現場での創意工夫などから生まれたノウハウを含むこと。
(4) 対策内容は文中では省略してあっても、理論的な裏付けのあること(信頼性と再現性のあること)。
名人・上手といわれる人の内容を分析すると、非常に理にかない、無駄を徹底的にそぎ落とし、シンプルなものが多い。
(5) 今後直面する課題についても応用できること。より高いレベルを目指す場合の参考になること。
内容は実際に直面している課題に焦点を当て、すぐに役立つよう
必要なときに、必要な情報を、必要なだけ得る
ために読めばよいように考えました。実務面で困難な課題に直面したときに本書を開いてみてください。そのときどきで参考になれば幸いです。
本書の出版にあたり、企画の段階から発行に至るまで、適切なアドバイスとご協力を頂きました日刊工業新聞社出版局の野崎伸一氏に深く感謝を致します。
平成20年8月吉田弘美