プレス作業現場において初級者が「一人前」と言えるようになるために知っておくべき種々の技術、技能、知識の要点を、自分がどのレベルに達しているか、足りないのはどこかを評価する指標となるチェックシートに基づいて解説する。
目次
はじめに
《プロローグ》「一人前」への道しるべ
1 金属プレス加工とは
プレス加工の3要素
プレス加工のプロセス
2 金型の構造と機能
■チェックシート
金型部品の機能
打抜き金型
曲げ金型
絞り金型
順送型
トランスファ型
複合型
3 金型部品加工
■チェックシート
金型製作の流れ
金型部品の加工工程
各種加工法の特徴
各種加工法の加工現象
金型の材料
測定のし方
4 金型の組立て
■チェックシート
金型組立ての準備と心構え
図面の見方
金型組立てに用いる工具
金型組立ての手順
5 金型の取付け
■チェックシート
金型取付けの基本
段取りの効率化
金型の試し加工
6 プレス機械と周辺装置
■チェックシート
プレス機械の基本構造と仕組み
クランクプレス
リンクプレス
トランスファプレス
サーボプレス
付属装置
供給装置
送り装置
搬送・移動装置
プレス自動化ライン
ミス検出装置
7 成形材料
■チェックシート
成形材料の特性と形状
鉄鋼材料
表面処理鋼板
非鉄系材料
8 プレス加工理論
■チェックシート
せん断加工
曲げ加工
絞り加工
潤滑
9 安全対策
■チェックシート
安全確保の視点
安全装置
プレス機械点検の必要性
プレス機械の日常点検
作業に適した姿勢・服装
特定自主検査
リスクアセスメント
索引
はじめに
モノつくりの海外流出が進み、日本国内での空洞化が言われ続けている。量産を得意とする金属プレス加工業も例外ではない。しかしながら、同じ金型、プレス機械、被加工材がそろっても必ずしも同じ品質の製品が造り出されるとは限らない。そこには、金型の取付け、プレス作業、検査の過程で品質を左右する作業をする人が存在する。その存在は、難しい金属プレス加工ほど重要である。特に、今後、従来のプレス機械と異なり自由自在の動きを可能にするサーボプレスの出現による「プレス加工過程のプログラム化」が必須となり、この機能を有効的に活用し製品設計・金型設計へ情報発信して新たなプレス加工技術を構築するためには、「原理原則」に基づいて基礎から確実に積み上げられた技術・技能がプレス作業に従事する方々に必要とされる。
本書は、雇用・能力開発機構で職業訓練に従事し、新たな職に従事する方々の離職者訓練、企業で働き必要な新たな技術・技能を学ぶ方々の在職者訓練、高等学校卒業後の実践技術者の道を目指す方々の訓練で、日々プレス加工をはじめとする金属加工にかかわる技術・技能の訓練を行っている指導員集団が、蓄積している「原理原則」に基づいた訓練のノウハウを投入した。
技術・技能を修得するためには、「何を何のために習得するのか」を事前に理解し、学んだ後に評価することが大切である。本書では、「一人前」の技術・技能者になるために必要な道筋を技術・技能の習得度で確認できるチェックシートを示した。これらを利用されることが、到達目標を含めたガイドラインとして自学自習や社内教育訓練に効果的に活用していただき「考え創造する」ことが望まれる新たな時代の中で、プレス作業に従事する方々のスキルアップに多少でもお役に立てれば幸いである。
今回、このような出版の機会を提供いただき、刊行に際して数々のアドバイスを頂いた日刊工業新聞社出版局の森山郁也氏にこの場を借りて感謝いたします。
編著者
小渡 邦昭
独立行政法人 雇用・能力開発機構
高度職業能力開発促進センター 素材・生産システム系 教授
執筆者(あいうえお順)
川村 協平
東海職業能力開発大学校 生産機械システム技術科 講師
小渡 邦昭
高度職業能力開発促進センター 素材・生産システム系 教授
榊原 充
高度職業能力開発促進センター 素材・生産システム系 講師
柴田 悟
三重職業能力開発促進センター 機械系 講師
鈴木 孝雄
茨城職業能力開発促進センター 機械系 講師
多井作 和郎
中部職業能力開発促進センター 機械系 講師
喬橋 憲司
千葉職業能力開発短期大学校 制御技術科 講師
中杉 晴久
北陸職業能力開発大学校 生産機械システム技術科 講師
増川 一郎
富山職業能力開発促進センター 機械系 職業能力開発先任指導員
村上 智広
職業能力開発総合大学校 能力開発専門学科 准教授
吉本 俊二
九州職業能力開発大学校 生産機械システム技術科 教授